日本臨床外科学会雑誌
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症例
S状結腸癌術後に発症した上腸間膜動脈症候群の1例
村瀬 寛倫安藤 拓也前田 頼佑中野 浩一郎深尾 俊一伊藤 寛
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2020 年 81 巻 3 号 p. 525-529

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抄録

症例は58歳,女性.S状結腸癌の診断で高位前方切除術を行った.術後経口摂取は良好であったが,8日目に頻回の嘔吐を認めた.腹部CTで上腸間膜動脈(以下SMA)の分岐が鋭角化し十二指腸水平脚が圧迫された所見と,胃および十二指腸の液貯留を認め,SMA症候群と診断した.経鼻胃管による減圧と静脈栄養による保存的治療で改善した.左側大腸癌術後に生じるSMA症候群は,吻合の際に腸間膜が尾側に牽引され緊張が掛かることによりSMA分岐角が鋭角化して十二指腸が圧迫され発症すると考えられる.左側大腸癌の術後早期のイレウスの原因として念頭に置く必要があり,SMA症候群と診断が確定した場合はまず保存的治療が第一選択となる.

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