日本臨床外科学会雑誌
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症例
上行結腸癌穿孔性腹膜炎による菌血症に起因する感染性大動脈瘤の1例
伊藤 雅典野中 泰幸横山 翔平岡田 剛篠浦 先繁光 薫
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2020 年 81 巻 8 号 p. 1508-1512

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抄録

症例は83歳,男性.発熱と歩行困難を主訴に当院へ救急搬送された.CTにて上行結腸壁肥厚と周囲腸間膜側優位にfree airが認められたため上行結腸癌穿孔と診断し,緊急手術となった.手術は右結腸切除とし,小腸横行結腸の状態も比較的良好で吻合も可能であった.術後経過は良好であったが,手術前の血液培養からグラム陽性桿菌が検出されたためClostridium属も念頭に置いて2週間の抗菌薬治療を行った.CT上も腹腔内膿瘍など指摘できず,炎症反応も低下を認めたが術後20日目に炎症再燃を認め,CTにて大動脈弓部の炎症と周囲free airを指摘され,菌血症に起因する感染性大動脈炎の診断となり,その後同部位の瘤化を認めた.血液培養は最終的にClostridium septicum (C. septicum)が検出された.C. septicumはガス壊疽などの原因となる菌であり,回盲部にも生息すると報告されている.大腸癌に起因するC. septicum菌血症の報告はあるが,これに起因する感染性大動脈瘤形成の報告は無く,稀な病態であると考えられる.

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