2020 年 81 巻 7 号 p. 1238-1242
腹部外科領域にて腹腔鏡下手術の発展と普及はめざましく,標準化された術式として腹腔鏡下手術を行う機会が年々と増加している.この際,前回の開腹手術に伴う腹膜への腸管の癒着により腹腔鏡的なアプローチの障害となる可能性がある.当院では腹腔鏡下手術を予定した症例に対し術前超音波検査による腹腔内癒着評価とそのマッピングを行っている.対象は2014年1月から2018年12月までの腹腔鏡手術予定患者のうち,判定が可能であった615例である.超音波検査による術前癒着判定とマッピングは,被験者に腹式深呼吸をゆっくり繰り返してもらい,腹部内臓器の呼吸性移動の状況を確認した.超音波診断は,感度:51%,特異度:95%,正診率:89%となった.腹腔鏡用のtrocarを挿入する際に使用する臍部に限局すると,感度:84%,特異度:99%,正診率は97%になる.超音波検査による腹壁癒着の評価によって手術を安全に施行するために広く応用されるべき方法と考える.