2018 年 79 巻 12 号 p. 2507-2512
症例は57歳,女性.突然の腹痛を自覚し救急外来を受診した.造影CTで多量の腹水と膵体部に連続する30×23×20cmの巨大嚢胞性病変を認め,壁の一部に結節像を認めた.腹水ドレナージを施行し腹水細胞診はクラス2であったが,壁在結節の存在と腫瘍の大きさから膵粘液性嚢胞腺癌の破裂を疑った.腫瘍破裂による腹膜播種が懸念されたため,暫く経過観察とした.3カ月後のフォローアップCTでは膵嚢胞性病変は31×26×25cmと増大していたが,腹水は消失し明らかな腹膜播種所見を認めなかったため,脾合併膵体尾部切除術,横行結腸部分切除術を施行した.病理学的には腫瘍は膵粘液性嚢胞腺腫で,卵巣様間質を有していた.術後1年経過し無再発生存中である.膵粘液性嚢胞腫瘍は比較的稀な疾患で,診断には特徴的な卵巣様間質の証明を要する.破裂を契機に発見された膵粘液性嚢胞腫瘍は極めて珍しく,文献的考察を加えて報告する.