2018 年 79 巻 10 号 p. 2058-2062
症例は腹痛を主訴に外来を受診した,20歳の男性である.夕食を過量摂取後に野球の素振りを30分間行ったが,約4時間後より突然腹痛が出現した.来院時にはショック症状はなかったが,腹部全体に筋性防御と反跳痛を認めた.腹部CTにて肝表面,Douglas窩,左網嚢内に血腫を疑う液体貯留を認めた.緊急血管造影では腹腔動脈や上腸間膜動脈に動脈瘤や造影剤の血管外漏出は認めなかった.その後プレショックとなったため,緊急手術を施行した.脾彎曲に近い胃結腸間膜が10cmにわたって断裂しており,出血の原因と推察された.周囲血管には,病理学的にSAMや血管炎などの器質的変化は認めなかった.発症の機序として食物で重量の増した胃と固定された胃結腸間膜が,素振りの体幹回旋動作により断続的に牽引され断裂を生じたものと考えた.若干の文献を踏まえ考察した.