日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔鏡下肝切除術後に判明した肝細胞癌完全自然壊死の1例
谷口 理丈佐久間 康成小泉 大笹沼 英紀Alan Kawarai Lefor佐田 尚宏
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2018 年 79 巻 9 号 p. 1922-1927

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抄録

症例は70歳の男性で,塵肺(エリスロマイシン内服),慢性腎不全(血液透析中),ANCA関連血管炎(プレドニゾロン内服)の併存症があり,定期CT検査で肝腫瘤を認め当院を紹介受診した.CTで肝S3に単純で低吸収,動脈相で濃染,門脈相でwash outされる腫瘤を認めた.MRIではT1低信号・T2高信号,diffusionで拡散低下,肝細胞相でdefectを認め,エコーではhaloや後方エコーの増強を伴っていた.画像所見から肝細胞癌と術前診断し,腹腔鏡下肝S3部分切除術を施行した.腫瘍は大きさ40×37×33mmの被膜を有する壊死組織で,viableな細胞は認めなかった.中心壊死・硝子化線維性組織・弾性線維を特徴とする肝孤立性壊死性結節を鑑別としたが被膜に弾性線維がなく,肝細胞癌完全自然壊死を最終診断とした.自然壊死の機序として透析による血流障害,エリスロシンやステロイドの薬剤関与が考えられた.

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© 2018 日本臨床外科学会
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