日本臨床外科学会雑誌
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症例
胃底部漿膜パッチ術が奏効したアルカリによる急性期食道穿孔の1例
加藤 昇遠山 一成
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2018 年 79 巻 7 号 p. 1433-1438

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抄録

症例は54歳,女性.自殺目的でアルカリ性漂白剤であるハイター®の原液を約300ml飲用し,嘔吐を1回伴った.約1時間後の救急搬入時,軽度の乳酸アシドーシスと胸部単純X線で広範な縦隔気腫を認めた.CTで食道炎による壁肥厚と縦隔気腫を認め,内視鏡検査で食道胃接合部近傍の下部食道に壊死穿孔を認めた.腐食性食道炎の急性期穿孔であり,穿孔部の閉鎖が必要であったが,壊死部の境界が不明瞭で更なる拡大が危惧されたため,fundoplicationを応用した胃底部漿膜パッチで穿孔部を中心に広い範囲を被覆した.第27病日食道造影で漏出や狭窄像を認めず,第44病日内視鏡検査で穿孔部は粘膜が進展して閉鎖しているのを確認した.
アルカリによる腐食性食道炎における急性期穿孔は少ないが,重篤な病態である.壊死部の境界が不明瞭なためデブリドメントを要する縫合閉鎖が困難であり,胃底部漿膜パッチが有用と考えられた.

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