日本臨床外科学会雑誌
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症例
保存的に治療した門脈ガスを伴う胃気腫症の1例
上江洌 一平高宮城 陽栄知念 順樹金城 泉宮里 浩友利 寛文
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2018 年 79 巻 6 号 p. 1209-1215

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抄録

症例は69歳,男性.統合失調症で約20年間精神科病院に入院中,腸閉塞の疑いで当院に救急搬送された.当院へ搬送時,腹部膨満が著明であったが明らかな腹部圧痛は認めなかった.腹部造影CT検査では,胃拡張,胃壁に沿って空腸近位部まで気腫性変化,肝左葉を中心に門脈ガスを認めた.空腸近位部での狭窄を認めたが,明らかな絞扼所見はなかった.以上の所見より,空腸近位部での腸閉塞を契機とした胃気腫症と診断した.腹膜刺激症状がなく全身状態は安定していたため,同日緊急入院とし,経鼻胃管留置,絶食,補液による保存的治療を開始した.入院後も腹痛は出現せず,経時的に施行したCTにて,腸閉塞の改善,門脈ガスおよび胃壁内気腫の消失を確認した.
今回われわれは,発症がまれな門脈ガスを伴う胃気腫症に対して保存的に治療しえた1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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