日本臨床外科学会雑誌
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症例
複雑な胆管分岐形態を示した右側肝円索を伴う肝門部胆管癌の1例
津久井 秀則佐久間 康成笹沼 英紀堀江 久永安田 是和佐田 尚宏
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2015 年 76 巻 10 号 p. 2532-2537

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抄録

右側肝円索は,胎生期における右側臍静脈遺残に起因するとされ,門脈右枝に臍部が存在し,同部に肝円索が付着する解剖学的変異と考えられている.今回,複雑な胆管分岐形態を示した右側肝円索を伴う肝門部胆管癌の切除例を経験した.症例は62歳の男性.皮膚黄染を主訴に当院を受診,造影CTで胆管壁の肥厚と肝内胆管の拡張を認め,さらに胆嚢が肝円索の左側に位置する右側肝円索を認めた.胆汁細胞診からはClass IVが検出され,右側肝円索を伴う肝門部胆管癌と診断した.門脈分岐形態を考慮し後区域枝のみ塞栓術を行い,手術は肝後区域切除・肝外胆管切除・胆管空腸吻合術を行った.本症例では胆管分岐においてB2から後区域枝が分岐する形態を示す他,その他の胆管分岐形態からも,右側肝円索における左右対称性の理論に合致するものと考えられた.右側肝円索には脈管の分岐異常を伴うことが多く,術前の詳細な画像検索と慎重な手術計画が重要と考える.

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