2013 年 74 巻 10 号 p. 2906-2911
69歳,女性.検診で発見された胃ポリープ精査中,CTにて左副腎部に約2cm大の腫瘤が認められ,約半年の経過観察を経て約5cmまで増大を示し当院紹介となった.血液・尿検査にて異常は認められず,内分泌活性はなかった.MRIでは約5cm大の左副腎腫瘤を認め,T1強調像では腫瘤は不均一低信号,T2強調像では高信号と低信号が混在していた.悪性の可能性を考慮し腹腔鏡下左副腎摘除術を施行した.最終診断は,左副腎皮質癌pT2N0M0 stage IIとした.副腎皮質癌はまれな疾患であり,内分泌活性を示すものが多く,非機能性のものは少ない.一方で,臨床症状を伴わない副腎偶発腫瘍が発見される機会が増加している.内分泌活性を有するものや悪性が疑われるものは手術適応とされる.今回,われわれは増大傾向のある副腎偶発腫瘍に対して腹腔鏡下に手術を行い,非機能性副腎皮質癌との診断に至った1例を経験したので報告する.