2012 年 73 巻 11 号 p. 2763-2767
乳房Paget病は乳癌細胞が乳頭もしくは乳輪の表皮内に進展したもので,乳頭や乳輪に発赤やびらんを生じることによって発見される.浸潤性腫瘤を形成する場合はPagetoid型として扱われ,浸潤性腫瘤を認めないPaget型と鑑別される.術前,Paget型との診断にて手術を施行し,永久標本にてリンパ節転移が高率なPagetoid型と診断に至るケースも存在する.Pagetoid型はPaget型と類似した皮膚所見を呈するものの,予後や治療方法が異なり,腋窩リンパ節転移の有無を的確に評価することが重要である.当科で経験した乳房Paget病5例を報告する.全症例で浸潤性腫瘤を認めなかったため,Paget型であると考えられた.手術ではセンチネルリンパ節生検を施行し,転移を認めなかった.Paget病の手術は,最初から腋窩リンパ節郭清を省略するのではなく,センチネルリンパ節生検を施行するのが妥当だと考えられた.