2010 年 71 巻 1 号 p. 191-195
症例は5歳,女児.生直後に乳児持続性高インスリン血症性低血糖症(PHHI)と診断され,オクトレオチド投与でコントロールされていた.重篤な低血糖はないものの低血糖に対し頻回の血糖測定と補食が必要で,肥満と高度脂肪肝が認められた.膵切除術の適応精査を行い,経皮経肝門脈血サンプリングでインスリン過剰分泌が膵体部に優勢であったため,脾温存膵体尾部切除を施行した.組織学的にdiffuse typeの膵島細胞症と診断された.術後はオクトレオチド休止後も低血糖の出現なく補食も中止可能となり,2年経過し肥満は軽快傾向で糖尿病の発症はみられない.内科的にコントロールされるPHHIに対して,薬物治療から離脱可能でかつ膵切除後の糖尿病を生じない範囲での膵減量切除が可能であれば,長期薬物療法と広範膵切除の問題点を相補する治療選択肢となりえると考えられる.