日本臨床外科学会雑誌
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症例
S状結腸切除と左精巣動静脈・精管合併切除後の左精巣壊死の1例
津福 達二磯邊 眞田中 眞紀篠崎 広嗣山口 美樹武田 仁良
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2010 年 71 巻 7 号 p. 1870-1873

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抄録

症例は64歳,男性.左下腹部痛を主訴に来院した.精査の結果,S状結腸癌を認めS状結腸切除術を施行した.術中所見で,腫瘍は外側鼠径窩の位置で後腹膜に浸潤固定しており,同部位で精巣動静脈,精管を巻き込んでいた.精巣動静脈,精管を合併切除し腫瘍を摘出した.術後より発熱を認め左精巣は腫大した.超音波検査で血流信号がなく,血流障害による精巣壊死が疑われ手術を施行した.手術所見で,精巣は暗黒色に腫大し壊死しており左精巣摘出術を施行した.
S状結腸切除に際し精巣動静脈合併切除をしても精巣は壊死しないのが一般的である.精巣への血流は精巣動脈だけではなく,外陰部動脈,精管動脈,挙睾筋動脈,膀胱動脈や前立腺動脈から血管が分枝し,さらにそれらが吻合枝を有しているからと考えられる.今回われわれは非常に稀な精巣壊死症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

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© 2010 日本臨床外科学会
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