日本臨床外科学会雑誌
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症例
大網原発神経鞘腫の1例
加藤 久仁之目黒 英二権藤 なおみ秋山 有史高金 明典池田 健
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キーワード: 大網, 神経鞘腫
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2009 年 70 巻 9 号 p. 2839-2843

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抄録

症例は59歳,女性.上腹部不快感を主訴に当院受診.腹部CTで右上腹部に直径10cmの境界明瞭で内部に一部石灰化を伴う嚢胞性腫瘍を認めた.MRIではT1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号,脂肪抑制画像で抑制効果を認めない腫瘍であった.確定診断は得られなかったが,摘出術を施行した.腫瘍は大網と一部連続し,右胃大網動脈から栄養血管が分枝しており,大網の一部と共にこれを切除した.摘出標本は,橙色透明な漿液性の内容を含む多房性腫瘍で,一部充実成分を含んでいた.病理組織検査では同部位は,類円形~紡錘状の細胞からなり,S-100蛋白陽性かつKIT陰性で,Antoni B型の良性神経鞘腫と診断された.大網原発の神経鞘腫の本邦報告例は,自検例を含め8例であり極めて稀である.自覚症状や理学所見,画像診断上特有なものが無く,術前診断は困難であるが,腹腔内に発生する腫瘍の鑑別診断の1つに挙げるべきと思われた.

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© 2009 日本臨床外科学会
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