日本臨床外科学会雑誌
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症例
胃癌との鑑別が困難であったAFP産生膵腺房細胞癌の1例
河口 賀彦河野 浩二水上 佳樹平井 優藤井 秀樹
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2009 年 70 巻 9 号 p. 2816-2822

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抄録

症例は63歳,男性.黒色便を主訴に,上部消化管内視鏡検査を施行したところ,胃体中部に発赤病変を認め,生検の結果,中分化型管状腺癌と診断された.血液検査では軽度の貧血とAFP高値(871.1ng/ml)を認めた.腹部CTでは,左上腹部に径10cmの巨大な腫瘤を認め,胃,膵尾部,脾臓への浸潤を認めた.腫瘤は,不均一な造影効果を認め,中心は造影効果を認めない部分を有していた.胃もしくは膵原発の腺癌と診断し,左上腹部内臓全摘術を施行した.肉眼的に腫瘍は黄色調で分葉状を呈しており,被膜は存在せず,胃,膵臓,脾臓と一塊となっていた.組織学的には,腫瘍細胞は腺房状と管状構造をとり,胃固有粘膜まで同様の所見が連続して認められた.免疫染色の結果anti-trypsin陽性であり,膵腺房細胞癌の最終診断となった.現在術後6カ月であるが,AFPも正常化し,明らかな再発を認めていない.

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© 2009 日本臨床外科学会
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