日本臨床外科学会雑誌
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症例
肺膿瘍から炎症性大動脈破裂に至った高齢者特発性食道破裂の1例
興梠 健作原田 洋明松下 弘雄西村 卓祐下川 恭弘木村 正美
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2009 年 70 巻 6 号 p. 1680-1684

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抄録

症例は85歳,男性.食欲不振と咳を主訴に近医受診した.胸部X線写真で肺炎が疑われ加療されたが,症状が悪化し当院紹介となった.CT検査では左下葉の肺膿瘍を認めた.食道透視にて胸部中部食道から肺膿瘍に連続する造影剤の漏出を認め,特発性食道破裂の肺内穿破による肺膿瘍と診断し,緊急手術を施行した.胸部中部食道に約1cmの穿孔部を認めT-tubeを留置し,洗浄・ドレナージを行った.術後14日目に胸腔ドレーンから大量の出血を認め,再手術を行ったところ,食道穿孔部近傍の下行大動脈壁が炎症の波及により穿孔していた.開窓術にてガーゼドレナージ圧迫を行い,その後小康状態であったが,再手術後7日目に再度大出血をきたし死亡した.高齢者の特発性食道破裂は典型的な症状や検査所見を認めないことも多く,診断の遅れから病状の重篤化をきたしやすい.治療は侵襲との兼ね合いも考慮し選択すべきと考えられる.

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© 2009 日本臨床外科学会
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