日本臨床外科学会雑誌
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腹部打撲を認めない胃破裂の1例
森嶌 淳友高橋 裕山口 哲哉武田 亮二坂田 晋吾山本 道宏
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2004 年 65 巻 6 号 p. 1534-1538

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抄録

33歳,男性.多量飲食後車で帰宅中,酒気帯び運転にて自損事故を起こし救急搬送された.搬入時,呼吸時胸痛,腹部鈍痛を訴えたが悪心嘔吐はなかった.視診上,腹部に皮下血腫はなかった.緊急検査では左多発肋骨骨折を認め,血気胸はないが軽度呼吸困難あり呼吸器科に入院となった. 3時間後,腹部の自発痛を訴え腹部板状硬,反跳痛を認めた.腹部CTを再検したところ腹腔内遊離ガス像認め,胃小彎側から胃内容物の漏出が疑われ,外傷性胃破裂の診断にて緊急開腹術を施行した.開腹すると胃前庭部小彎前壁に1 cmの胃壁完全断裂を認め,胃内容物が漏出していた.さらに同部位から噴門側に向かって筋層,粘膜が8 cm断裂していた.他の腹腔内臓器には損傷はなかった.胃壁損傷部辺縁を切除し縫合閉鎖した.術後経過は良好で術後14日目で退院した.腹部打撲痕がなく,腹腔内の他臓器損傷も伴わない単独の外傷性胃破裂は極めて特異で稀であるため,破裂のメカニズムについて文献的考察を行い報告する.

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