2001 年 62 巻 12 号 p. 2909-2912
症例は45歳,女性. 1993年8月,右乳癌に対して非定型乳房切除術を施行した.術後定期的に外来通院するも1998年3月より上腹部膨満感や嘔吐が出現するようになり,胃透視にて幽門狭窄を認め,内視鏡で粘膜面正常なるも壁伸展不良を認めた.胃癌の診断にて6月胃亜全摘術を施行した.術中,横行結腸漿膜の2カ所に腹膜播腫と思われる小結節を認めたため,これを摘出した.切除標本の病理所見はmetastatic poorly differentiated adenocarcinoma, se (m: intact), n1, PM(+), DM(-), P1であり,乳癌からの転移と考えられた.術後経過良好であり,化学療法としてCEF1クール施行した後,退院した.以後,外来にて経口の内分泌化学療法を施行し,術後3年の現在,無再発生存中である.乳癌の胃転移は少なく若干の文献的考察を加えて報告する.