日本臨床外科学会雑誌
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術前化学療法を併用した炎症性乳癌の1例
恵木 浩之田部 康次大下 彰彦藤崎 成至山中 達彦中村 雄二
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キーワード: 炎症性乳癌, 集学的治療
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1998 年 59 巻 9 号 p. 2263-2266

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抄録

乳房の発赤,腫脹を特徴とする乳癌を炎症性乳癌 (inflammatory carcinoma of the breast) という.炎症性乳癌は,通常の乳癌と比較し予後不良で特殊な病型に分類されている.以前は手術単独療法のみでは5年生存率数%と成績が非常に悪かったため手術が禁忌とされる時代もあった.その後研究が進むにしたがって,手術と化学療法を中心とした集学的治療で50%を越える5年生存率を示す報告もみられるようになってきた.
本症例は60歳女性.乳房腫瘤の急速な増大と著明な発赤,腫脹を主訴に当科受診,炎症性乳癌と診断した.われわれは本症例に対し,術前後に化学療法 (CAF) を併用した手術療法を施行した.炎症性乳癌は全身療法,動注療法を含めた化学療法を併用した集学的療法が効果的であると言われており,積極的に導入するべきであり,今後さらなる工夫により治療法の発展が必要である.

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