2009 年 16 巻 4 号 p. 481-485
急速に心不全の進行した褐色細胞腫に対し,経皮的心肺補助(percutaneous cardiopulmonary support, PCPS)下に早期手術を行い救命できた一例を経験した。症例は32歳男性。高血圧発作で救急受診し,腹部CTで左副腎褐色細胞腫と診断された。降圧薬,輸液による術前管理を開始したが,うっ血性心不全が急速に進行した。救命には腫瘍からのカテコラミン遊離停止が必要と考え,酸素化改善と腫瘍摘出後の循環補助を目的にPCPSを導入し,緊急腫瘍摘出術を施行した。危惧された摘出に伴う循環変動は全く認めなかった。腫瘍には広範な出血と壊死を認め,カテコラミンは術前にほぼ枯渇していたと考えられた。術後速やかにPCPSから離脱,心機能も順調に回復し,第21病日に退院となった。褐色細胞腫における急速な心不全の進行では,過剰カテコラミンによる心筋症とともに,腫瘍壊死に伴うカテコラミン枯渇を念頭に置く必要がある。