日本救急医学会雑誌
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症例報告
消化管穿孔を合併した感染性膵壊死に対し,体腔深部への持続吸引を加えた陰圧閉鎖療法が有効であった1例
高松 純平加藤 昇永嶋 太坂本 道治山本 啓雅山村 仁溝端 康光
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2011 年 22 巻 1 号 p. 9-14

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抄録

症例は68歳,男性。胆石性重症急性膵炎で当院に紹介され,同日endoscopic nasobiliary drainageを施行した。続発した感染性膵壊死に対し,第14病日と第35病日に壊死部の切除を実施し,術後も局所洗浄を行った。第67病日より壊死部からの断続的な出血を認めるようになり,第97病日にはショックに陥ったため開腹のうえ縫合止血術を施行した。第99病日,十二指腸穿孔を来したため開腹状態での管理を余儀なくされたが,膵液と腸液の漏出のため皮膚障害を合併した。皮膚汚染を軽減しつつ,創全体の肉芽形成を促進し早期に創閉鎖させることを目的に,陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy; NPWT)を導入した。腹腔深部で漏出する腸液に対しては,腹部全体に広がらないようにする必要があったため,膵壊死部膿瘍腔と十二指腸穿孔部近傍の持続吸引を追加した。十二指腸穿孔から14日後には十二指腸液の漏出が止まった。十二指腸穿孔から19日後,横行結腸にも穿孔が生じたが,diverting ileostomyを造設し,NPWTを続けた結果,穿孔後7日目には横行結腸穿孔からの漏出は認められなくなった。十二指腸穿孔から85日目,創はネラトンチューブを挿入した瘻孔を残して上皮化した。本症例では,腹腔深部の腸管穿孔部に対し,持続吸引を行うことで腸液の腹腔全体への広がりを回避した。この結果,効果的なNPWTを実施することができ,早期の肉芽形成,創閉鎖を得ることができた。本症例での工夫は,深部に消化管穿孔を合併する開放創に対するNPWTの適応を考慮するうえで意義あるものと考えられた。

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© 2011 日本救急医学会
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