日本救急医学会雑誌
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救急医療で使用される薬物の動態と脳死判定時の対策
唐澤 秀治畠山 郁夫丸子 孝之菅原 克也鐘司 光貴大竹 満博宮村 栄樹
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キーワード: 脳死判定, 薬物動態, 半減期
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2002 年 13 巻 3 号 p. 133-143

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抄録

脳死判定検査に入る前に,まず薬物の影響がないことを確認しなければならない。しかし,薬物の影響消失に関する全国共通のリストおよび実践的なガイドラインは存在しない。筆者らは,脳死判定に影響を与える29種類の薬物について調査した。有効血中濃度域が判明しているものは12種類しかなく,血中濃度測定可能な薬物も少ない。16種類の薬物には活性代謝物が存在した。作用持続時間および半減期が判明しているものは,それぞれ21種類,28種類であった。薬物の作用持続時間と半減期を組み合わせて,H時間(作用持続時間+半減期),D時間(作用持続時間+濃度が1/10になるまでの時間),F時間(半減期の4倍の時間)を算出した。重症脳損傷患者10例の薬物の血中濃度測定を実施し,作用持続時間,半減期,H時間,D時間,F時間のうち,どれが薬物の影響消失の目安として最も適切なのかという観点で検討を行った。薬物の影響が消失していると判定するためには,総合的判断が必要である。作用持続時間と半減期が明らかな場合にはH時間を影響消失の目安とし,半減期のみ明らかな場合には半減期の4倍の時間を目安とするのが妥当である。また,活性代謝物が存在する場合には,その影響も十分に考慮する必要がある。筋弛緩薬の場合には,四連反応比が0.9以上を目安とするのが適切である。これらをもとに実践的なガイドラインの1例を作成した。

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