2022 年 75 巻 7 号 p. 360-365
症例は68歳,男性.腸閉塞の精査にてスコープ通過困難なS状結腸進行癌を認め,大腸ステント留置術を施行した.術前に口側腸管評価のための全大腸内視鏡検査を施行したところ,横行結腸肝弯曲部に20mm大の0-IIa+IIc型の病変を認めSM浸潤が疑われたため,内視鏡的粘膜下層剥離術を施行し,病理組織学的所見はpT1a(SM 200μm)癌で治癒切除であった.その後,腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した.現在,術後31ヵ月無再発生存中である.
閉塞性大腸癌に対する大腸ステント留置は,術前に口側大腸の精査が可能となり,閉塞性大腸炎の診断のみならず同時性多発大腸癌の診断にいたる事もあり,適切な治療計画を立てる上で非常に有効な手段となる可能性が示唆された.