2022 年 75 巻 4 号 p. 176-181
症例は80歳,女性.肛門痛と脱肛を主訴に受診した.大腸内視鏡検査で,肛門管から直腸Rb前壁に達する白色調の腫瘤を認めた.生検組織の病理では肉腫様変化を示した扁平上皮癌の可能性があり,免疫染色で検討したところ,低色素性悪性黒色腫と診断された.画像診断で遠隔転移を認めなかったため,腹会陰式直腸切断術,D3郭清が施行された.術後病理診断はRb-P, Type1, sarcomatoid amelanotic malignant melanoma, pStageIIIbであった.Sarcomatoid amelanomatic malignant melanomaについて文献検索すると,肛門管原発ではあまり報告がなく,極めて希少な疾患であることが考えられた.本症例は術後3ヵ月で,多発肝転移,肺転移をきたし,15ヵ月を経過した時点で腸骨転移をきたした.現在,BSCの方針で経過観察中である.