2020 年 73 巻 1 号 p. 37-41
84歳,男性.22年前に胃癌に対して胃亜全摘術を施行され,術後腸閉塞を繰り返し,21年前に癒着剥離術および小腸バイパス,虫垂瘻造設術を施行された.経虫垂瘻的に腸管減圧を行われたが,腸閉塞の改善後に虫垂瘻は自然閉鎖していた.2年前より右下腹部の発赤,排膿を認め,近医で切開排膿処置を受けていたが改善なく,次第に同部に腫瘍を形成し,当院へ紹介された.右下腹部に長径4cmの腫瘍を認め,造影CT検査で右下腹部に腹壁から盲腸まで連続する腫瘍を認めた.同部の生検組織診断から高分化腺癌の診断を得た.盲腸癌の腹壁浸潤と診断し,腫瘍周囲腹壁を含めた回盲部切除術を施行した.肉眼所見から腹壁内に虫垂瘻遺残虫垂を認め,組織学的には虫垂粘膜上皮の癌化を認めた.病理診断よりV,pT4b(皮膚),N3,M0,StageIIIcと診断した.虫垂瘻遺残虫垂から発生した虫垂癌の稀な1例を経験したので文献的な考察を加え,報告する.