日本大腸肛門病学会雑誌
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症例報告
人工肛門造設後に多発瘻孔を形成したS状結腸憩室炎の1例
福岡 伴樹
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2016 年 69 巻 2 号 p. 115-120

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抄録

大腸憩室炎は頻繁に遭遇する疾患であり,周囲への穿通や瘻孔を生じた報告も散見される.しかし,これまで本邦では病変部の口側で人工肛門を造設した後に長期経過を経て多発瘻孔を形成した報告はみられない.症例は64歳女性.S状結腸閉塞に対して横行結腸人工肛門を造設,2期的に病変部の切除を試みたが周囲への癒着が強く断念した.その後の精査では腫瘍性病変を認めなかった.約1年後の注腸造影でS状結腸-回腸瘻を認めたが自覚症状なく経過観察とした.さらに約2年6ヵ月後に微熱と左鼡径部痛を訴え,腹部CTで左腸腰筋から股関節に及ぶ膿瘍を認めた.経皮的ドレナージの上で精査を行ったところ,S状結腸回腸瘻のほかにS状結腸から後腹膜への穿通も生じ膿瘍を形成していた.慢性炎症性疾患による多発瘻孔と診断し,S状結腸切除術,回腸部分切除術を行った.切除組織の病理組織学検査でS状結腸憩室の慢性炎症による穿孔と診断した.

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© 2016 日本大腸肛門病学会

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