2009 年 62 巻 8 号 p. 511-515
下部直腸に発生した直腸サルコイドーシスの1例を経験したので報告する.症例は64歳,女性.主訴は肛門部違和感.現病歴は,近医にて内痔核に対し保存的治療を受けていた.この時,下部直腸に腫瘍を指摘され手術を勧められた.当院での精査加療目的に受診した.直腸肛門所見で,下部直腸左側壁を中心に約1/3周性の,粘膜下腫瘍様硬結を認めた.肛門7時·11時にGoligher 3度の内痔核を認めた.経肛門的超音波検査では,1∼4時方向で肛門挙筋上に3×4cmの等エコー輝度主体の腫瘤像を認めサルコイドーシスが疑われた.経肛門的超音波ガイド下に穿刺生検を行い,病理組織学的検査の結果サルコイドーシスを示唆する所見であった.Gaシンチなどの全身検索を施行し,前上縦隔にGaの集積,胸部CTで同部に異常陰影を認めた.QOL向上の目的で内痔核に対し,痔核結紮切除術を施行した.現在,さらにサルコイドーシスに対して詳細な検査を行いつつ経過観察中である.