日本大腸肛門病学会雑誌
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私の歩いた直腸癌治療の道
小平 進
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2001 年 54 巻 9 号 p. 601

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抄録

本邦における直腸癌手術は,1940年頃まではいわゆる仙骨術式が主流であり,その後,合併術式,即ち腹会陰式直腸切断術が長い間定型的根治術式とされてきていた.
私が直腸癌治療に関与しはじめたのは1970年頃であるが,その頃より,手術々式としては自然肛門を温存する括約筋温存直腸切除術が徐々に普及しはじめると共に,手術操作としては徹底した側方リンパ節郭清を伴う拡大郭清手術が登場してきていた.
その後今日まで約30年間の問に私が体験した直腸癌治療法の変遷をみると,非常に大きな動きがみられる.即ち,術式の面においては低位前方切除術における手縫い吻合の工夫,器械吻合の導入,経肛門的結腸肛門管吻合の登場など括約筋温存手術が進歩し,現在では直腸癌に対する定型的術式は括約筋温存手術となっており,更に,括約筋を切除せざるを得ない症例に対する肛門機能再建術まで登場してきた.
一方,手術操作の面においても,拡大郭清で得られた病態の解明をもとに,リンパ節郭清範囲の選択が行われるようになり,更に,術後の排尿・性機能温存をめざして自律神経温存手術が普及してきている.
また,手術成績の向上をめざした手術補助化学療法の研究も国内で多くの臨床試験が行われ,成果をあげつつある.
このような変遷の中で,この30年間の間にも直腸癌の治療成績は着実に向上しており,同時に術後QOLの向上もみられている.
以上の如き流れの中で,各時代毎に私自身が接してきた治療法について,一部成績を含めて述べる予定である.

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