びまん浸潤型大腸癌12例を対象として臨床病理学的に検討した.びまん浸潤型大腸癌症例の頻度は全大腸癌手術症例の1.3%で,性別は男性4例,女性8例で,平均年齢は56.9歳であった.腫瘍占居部位はT:2例,D:1例,S:3例,R:6例であった。術前血清CEA,CA19-9陽性率は77.8%,50.0%で,その中央値は各々8.3ng/ml,58.5U/mlであった。組織型では高分化腺癌はみられず,中分化腺癌が4例,低分化腺癌が6例,粘液癌が2例であった。壁深達度は全例がa2・se以上で,リンパ管侵襲ではly2以上が11例と高度であった。またリンパ節転移は全例が陽性で,8例は手術時に腹膜播種を認めており,進行度は1例がstage IIIaで他はstage IVであった.9例に対してERとpS2蛋白を免疫組織学的に染色した結果,ERは全例が陰性であったが,pS2は77.8%が陽性であった.予後はきわめて不良で,1例に1年生存を認めたのみで,全例が腹膜播種再発・再燃で死亡していた.