1996 年 49 巻 5 号 p. 399-404
直腸癌前方切除時の生理食塩水2,000mlによる術中直腸内洗浄の有効性を評価するため, 吻合部再発率の改善効果および腸管内遊離癌細胞の除去効果の2点について検討した.吻合部再発については洗浄を行うことで著明な減少を認めた (11.3%→3.5%).しかし粘膜の擦過細胞診による吻合予定部の腸管内遊離癌細胞除去効果の検討では, 洗浄後にも47%の症例でclassIIIb以上の陽性を示し, 遺残する直腸内遊離癌細胞の吻合部再発への関与の可能性が示唆された.とくに低位前方切除においては洗浄後にも70%と高率に癌細胞の遺残が認められ, 術中直腸内洗浄法のさらなる改善の必要性が示唆された.