1996 年 49 巻 1 号 p. 21-29
単発直腸進行癌のうち側方郭清された352例を対象に, 側方転移の頻度と郭清効果を検討し, 無病生存例からみた側方郭清の適応を考察した.側方転移は43例あり, うち無病生存は13例で壁深達度はmp 4例, a1・ss 5例, a2・se 4例であった.
12例はRa下部肛門側の治癒切除例で, 転移リンパ節部位は262・272・292の転移であった.側方転移の転移部位2箇所以内, 転移リンパ節個数4個以内に限られた.上方転移n1までが12例, 他の1例は252の跳躍転移であった.片側郭清の危険率は30%前後であった.側方郭清の適応は, 占居部位Ra下部肛門側で壁深達度mp以上の治癒切除可能例で両側の262・272の郭清が確実にできる範囲とし, 腫瘍下縁が歯状線に及ぶ例では292郭清も付加すべきと考えられた.適応となる側方転移は22例あり, うち無病生存は12例 (54.5%) で, 適応外の無病生存は1例のみであった.