日本大腸肛門病学会雑誌
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直腸癌における壁内進展
肛門側切離線決定のための病理組織学的検討
須田 武保畠山 勝義岡本 春彦斉藤 英俊千田 匡遠藤 和彦下田 聡武藤 輝一渡辺 英伸
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1992 年 45 巻 4 号 p. 421-426

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抄録

直腸癌の肛門括約筋温存手術の際,肛門側切離線(AW)決定の一助とするために,壁深達度sm以上の直腸癌171例を対象として臨床病理学的に癌の壁内進展について検討した,壁内進展は癌の口側と肛門側,性,手術時の年齢,占居部位で差を認めなかった.0型,1型,2型で98,1%,高分化,中分化の分化型癌で98.7%,深達度pm以内で100%が10mm以内に限局し,大多数腫瘍からの直接浸潤によるものであったが,3型,4型癌,低分化型癌および深達度a2・s以上の癌では10mm以上の壁内進展高度例が多く,腫瘍からの直接浸潤よりもリンパ管侵襲による進展を示していた.壁内進展に影響を及ぼす因子として重要なものは組織型,壁深達度およびリンパ管侵襲であった.以上よりAWは,0型癌と1型,2型でpm以内の分化型癌では10mm,aLssでしかもリンパ管侵襲のない分化型癌では20mmで十分であるが,3型,4型癌や低分化型癌,a2.s以上の癌では最低40mm以上必要であると考えられた.

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