1990 年 43 巻 2 号 p. 153-158
直腸癌治癒切除例13例に対して, 2種の核種 (99mTc-sulfur colloid, 111In-colloid) を用いたRI lymphographyを施行し上部直腸 (Ra), 下部直腸 (Rb) のリンパ流の検討を行った.手術前日にRIを直腸粘膜下層に注入し, 術後切除標本より摘出したリンパ節を詳細なマッピングの上, リンパ節を上方向経路, 側方向経路および大動脈周囲の大きく3つに分類しそれぞれのRI uptake値を測定し検討した.その結果, 上部, 下部直腸からのリンパ節は上方向経路に加えて, 内腸骨リンパ節を中心とした側方向経路も重要であると考えられ, また大動脈周囲リンパ節のRI陽性率が50.0%と下腸間膜リンパ節の38.5%より高率であったことより上方向リンパ流以外による大動脈周囲リンパ節への経路が示唆された.それに加え, 大動脈周囲リンパ節のうち大動静脈間, 大動脈前, 大動脈左のRIの取り込みが高率であり, 同部位の郭清を考慮すべきと思われた.