1986 年 39 巻 4 号 p. 393-396
きわめて稀な直腸,肛門,会陰部,臀部にわたるdiffuse cavernous hemangiomaの1症例を報告した.症例は28歳,女性,生下時より会陰部から臀部にかけて,赤色母斑を認めていた.10年前より肛門出血を認めており,昭和55年12月1日,某病院で痔核の診断で手術を受けたところ,肛門出血が持続し,同年12月20日当科に入院した.直腸,肛門,会陰部,臀部にわたる広範囲なdiffuse cavernous hemangiomaのため,直腸,肛門出血に対し,バルーンタンポナーデ,両側内腸骨動脈塞栓術などを試みたが無効であり,後方アプローチにより直腸,肛門を切断した.その後数カ月止血した時期もあったが,結局,会陰部,臀部のhemangiomaより頻回に出血を繰り返すことになり,全身衰弱にて昭和59年8月22日死亡した.
頻度は少ないものの,このような症例に対しては慎重な対応が必要であると思われ,文献的考察を加えて報告した.