1982 年 35 巻 2 号 p. 147-152
最近5年間に直腸肛門内圧検査を施行した36例のHirschsprung病症例のうち,直腸拡張に対して少しでも肛門管圧の下降を示した例は12例あった.これらの多くは肛門管圧の下降が不整であったり,直腸拡張と肛門管圧下降の時間が一致しており検査手技上の問題が指摘された.その主なものはballoonを拡張することによって受圧部が肛門管壁より離れることによると考えられた.しかし4例においては肛門管圧の下降も正常児の直腸肛門反射に類似しており,内圧的にはHirschsprung病と診断できなかった.
しかしballoon拡張で肛門管圧の下降を示した症例でも電気刺激では肛門管圧の下降は全く見られず,またレ線検査でも肛門管の弛緩が認められなかった.したがってHirschsprng病が疑われるのに肛門管圧の下降を示した揚合balloon以外の刺激を用いるとか,レ線透視下に肛門管の弛緩を観察するとよい.