炎症性大腸疾患のうち潰瘍性大腸炎,細菌性赤痢など8疾患35例の大腸粘膜を走査電顕的に検討した.同時に対照例6例及びなんらかの消化器症状を有し,内視鏡的に著変を認めなかったもの13例についても併せて検討した.
標本の粘液の除去は,中等度以上の炎症を有するものについては,5% plulonic F 68(界面滑性剤)の使用により,ほぼ達成された.各疾患に共通して,unitの変形,unitを区分する溝の不明瞭化,上皮細胞の変形,陰窩の開大,杯細胞の増加又は減少,微絨毛の変形を認めた.中でも微絨毛の変化が顕著であった.微絨毛の変化による重症度分類は,内視鏡的,組織学的重症度分類とほぼ平行した.微絨毛に萎縮退化像あるいは再生像と推察できる像を認めた.検討した症例については,疾患特異性を明らかにすることはできなかった.