応用生態工学
Online ISSN : 1882-5974
Print ISSN : 1344-3755
ISSN-L : 1344-3755
短報
水資源に乏しい河川の有機物汚濁に対する植物プランクトンの影響.
福田 竜也健太郎 野崎山田 佳裕
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 17 巻 2 号 p. 89-99

詳細
抄録

1. はじめに
 水資源に乏しい香川県では,河川水中のクロロフィルa 濃度が非常に高く,植物プランクトンによる有機物汚濁が深刻である.持続的な水利用のためには,植物プランクトンによる水質汚濁のメカニズムの解明が必要になる.本研究では香川県の主要河川の新川流域での植物プランクトンの空間的分布を明らかにし,その動態を解析した.
2. 調査方法
 新川とその流域にあるため池に定点を設け,2010 年 10 月23 日,2011 年7 月16 日に水を採取し,光学顕微鏡により植物プランクトンの細胞数を計測した.
3. 結果と考察
 2010 年10 月における新川の植物プランクトン細胞数は,上流では低く,様々な植物プランクトンが見られた.流域のため池密度が大きくなる中下流で著しく増加した.また,僅かな種類の植物プランクトンが 50%以上を占めた.7 月も同様に中下流で細胞数が上昇したが 10 月より少なかった.中下流の種組成は,いずれの調査日でも,Pseudanabaena sp. や Microcystis sp.,Anabaena spiroides のような富栄養湖で増殖する種が多くを占めていた.新川中下流域のため池は δ18O が高く,植物プランクトン濃度も高い.河川の植物プランクトンの組成は良く似ていることから,新川中下流では流域の富栄養化したため池の水が水源となっており,植物プランクトンがため池から河川に流入していると考えられる.灌漑期の 7 月は,灌漑用水の量,降水量ともに多くなる.河川中下流に有機物濃度の低い水が多く供給され相対的にため池の影響が小さくなることから,河川水の細胞数は低く抑えられると考えられる.

著者関連情報
© 2015 応用生態工学会
前の記事 次の記事
feedback
Top