てんかん研究
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発作性笑い
脳波・ビデオ同時記録された8症例
佐藤 圭子八木 和一清野 昌一
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1998 年 16 巻 2 号 p. 93-99

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抄録

部分発作性笑い8症例19発作を脳波・ビデオ同時記録をもとに検討した。8例中4例の笑い発作はそれまで稀にしか報告されていない前頭葉起源の複雑部分発作 (F群) であり、運動要素が著しい特有の自動症を伴い、笑いは急激に頓座する傾向があった。残る4症例では側頭葉起源の複雑部分発作 (T群) の一症状として笑いが出現しており、穏やかな身振り自動症を伴い、笑いは漸次減弱し終止する傾向があった。いずれの群でも笑いは複雑部分発作の初期に出現し、それぞれの発作起始部位に関連した発作症状と考えられた。発作波起始部の側方性は6例 (F群;4例、T群;2例) で確認され、左側4例、右側2例であった。残りの2例では明確な側方性は認められなかった。また、F群3例では頭部CTでも左側大脳半球に器質性変化が認められた。発作時の愉悦感情を想起し得た症例は1例もおらず、今回の症例ではてんかん発作性笑いに情動は伴っていなかったと推測された。しかしT群では、発作に伴う健忘状態がみられたので、愉悦感情を伴っていた可能性も完全に否定できないと考えられた。

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