2010 年 19 巻 3 号 p. 179-183
平成21年度の三重県内の乳がん検診無料クーポン配布者は66,507名,そのうち利用者は18,276名(27.5%)であった。クーポンの利用率は,年代別では40歳が最も高く(28.3%),市町別では菰野町が最も高かった(38.4%)。平成20年度と平成21年度において,それぞれ同年齢であった群における乳がん検診受診者数の変化をみると,クーポンが配布された群では1歳あたり受診者数が4.4倍に増加,配布されなかった群では1.1倍に増加していた。
クーポンの利用率が30%程度であった背景として,まず「住民側の要因」としてはさらなる教育・啓発の必要性が,「市町側の要因」としては特に医療資源の乏しい地域における検診機関の確保や市町のマンパワーの不足などが課題であると思われた。
クーポンが配布された群の1歳あたり受診者数の増加率が,配布されなかった群の増加率を大きく上回っていることから,クーポンおよび検診手帳の配布が乳がん検診受診者数の増加に一定の効果をもたらしたことが考えられる。今後,この効果を持続されるためには,住民の間に「無料だから受診する」のではなく,「がん検診が重要だから受診する」という意識付けが求められる。