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速報
神奈川県の茶における放射性セシウムの樹体内分布とその低減化について
白木与 志也北 宣裕山田 良雄
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2012 年 61 巻 5 号 p. 261-265

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抄録

神奈川県の茶は,一番茶新芽が萌芽前の2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震に伴う福島第一原子力発電所事故(以下,福島第一原発事故という)に起因する降下した放射性セシウムに汚染された。その後,4月中旬以降に萌芽した新芽の放射性セシウムを測定した結果,134Cs及び137Csの合計値で207Bq/kgであった。この茶樹における放射性セシウム濃度を部位別に測定したところ,古葉,小枝,太枝では同650~800Bq/kgと高い値を示したのに対し,樹幹及び根では同11~51Bq/kgとその値は低かった。次に,新芽摘採後にせん枝を行い,茶樹から古葉と枝を除去後に再生芽を発生させたところ,放射性セシウム濃度は同95Bq/kgと除去前の1/2に低下した。一方,せん枝を行わずに,古葉と枝を残したまま二番茶芽を発生させた場合の放射性セシウム濃度は同210Bq/kgで,せん枝前と同レベルの値を示した。以上の結果から,放射性セシウムが降下した茶樹では,放射性セシウムが古葉及び枝から吸収された後に新芽に移行したと推察されること及びこれらの古葉や枝を除去すれば,新芽における放射性セシウムの蓄積量を効果的に低減できることが明らかとなった。

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