芸術科学会論文誌
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一般論文
Caps: 深層学習を用いた書道作品における書体変換 — 篆書の文字認識と行書の作品生成 —
二ノ宮 梢平藤代 一成
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2022 年 21 巻 1 号 p. 11-22

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抄録

書道は日本の伝統的な文化である一方で,書道展は経験者の間で完結している.その要因の一つとして,鑑賞が書道の習熟度合いに大きく依存していることが挙げられる.そこで,本研究では書道初心者を対象にした鑑賞支援として,篆書の文字を認識し,行書の書体へと変換するシステムCaps(Calligraphy appreciation system)を開発してきた.篆書の文字認識には,畳込みニューラルネットワークを用いた手法を導入した.漢字が偏旁冠脚といったパーツから構成されるという特徴を利用して,書道作品に用いられる難読文字の認識を実現する.これにより,少ないデータ数と少ないクラス分類で,より性能の高い文字認識が可能になる.一方,行書体への変換には,敵対的生成ネットワークを用いた手法を導入した.文字骨格に対する筆跡の付与を学習したモデルを用いて,任意の漢字による書道作品画像を生成する.ここで,筆画情報と筆順情報をもった骨格画像を用いることで,効果的な筆跡の学習を実現した.評価実験を通じて,上記の二種類の手法を実装したCapsにより,書道作品に用いられる漢字の特定から書道作品画像の生成まで,直観的な操作に基づく鑑賞体験が可能になることを確認した.

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