芸術科学会論文誌
Online ISSN : 1347-2267
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一般論文
空間分割法と石器剥離面の境界領域探索に基づく剥離面認識手法
佐々木 陽今野 晃市
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2018 年 17 巻 5 号 p. 139-149

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抄録

石器の接合資料は,同一の母岩から製作された石器同士を接合し,隣接する石器間の位置や姿勢を復元した資料である.接合資料の作成は,出土した剥片の色や模様,形を手がかりとして,試行錯誤を伴う手作業で行われているため,剥片が多ければ多いほど多くの時間と労力がかかり,専門的な知識が必要とされる.作業者の負担を減らし,効率的な接合資料の作成を行うために,試行錯誤や手作業等の労力を,大幅に削減する技術が必要とされる.従来,接合資料作成のための石器剥離面の抽出手法が提案されている.しかし,著者らの先行研究では発掘調査報告書に必要な実測図を流用しているため,実測図が存在しない石器データについての剥離面抽出は,非常に困難である.また,実測図作成,流用の工程は手作業のため,手作業の工程が増えてしまい,労力と時間を費やしてしまう.そこで,本研究では,実測図作成,流用の工程削減を目指した,石器剥離面の認識手法について述べる.本手法は,元の点群を軽量化したデータを分割し,分割した点群を入力データとする.この入力データから特徴量を計算し,稜線候補点を抽出する.次に,抽出した稜線候補点上の点群から,kd-Treeを構築し,領域ごとに点密度の計算と,代表点の選出を行う.点密度の大きい領域の代表点を用いて,入力データを左回りに追跡する.追跡した点群は,意味のある点列として格納する.さらに,格納した点列から定義される閉領域から,特徴量に基づいた条件を満たすまで拡張し,境界線を表す点列として抽出する.本手法で抽出した点群で囲まれた閉領域は,剥離面を意味する.本実験では,石器の計測点群を軽量化したデータを用いて,自動的に剥離面を認識できることを確認した.

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