陸水学雑誌
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北海道に於ける鮎の分布とその生態二三
岡田 雋櫻井 基博
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1939 年 9 巻 3 号 p. 136-142

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抄録

1)北海道に於ける鮎の分布及概略の産額を第1圖に示した。
2)北海道に於ける鮎の溯河期は大部分不明であるが,今囘朱太川だけ判明した。
昭和14年の調査では5月17日では溯河には稍早く6月10日では既に溯河を開始してゐる。
3)第1囘調査では大部分「シラス鮎」で體長は平均5.5cm,第2囘調査では全部成體の鮎形となつてゐて「シラス鮎」はなく體長は平均約7.0cmになつてゐる。
4)溯河は河海の水温が均等となるに及び開始されるものと思はれる。本年朱太川では河海水温は13℃で均等となつてゐる(6月10日觀測)。兩方の水温の均等となるのは多分6月初め頃からであらう。
5)産卵期も不詳の河川が多いが一般に8月下旬―10月初旬(9月中旬が盛期)の模樣である。産卵場所は普通河川の下流であるが石狩川の様に下流の河底が泥質で砂礫のない區域の長い處では,上流20里の支流豐平川又は千歳川の下流に産卵場所が見られる。
6)蓄殖保護施設としては消極的には北海道廳で主なる16河川に就き禁漁期間を設けて天然蕃殖を保してゐる。禁漁期は4月1日-6月30日及9月15日-10月31日である。積極的には現在7河川で人工孵化を行つてゐる外見るべきものがない。

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