諏訪湖では,現在までに水質・底質に関する化学・生物的な研究は多くみられるが,物質循環を議論するうえで不可欠な「湖水の動き」に関する現地観測はあまりみられなかった.そこで本研究では,ADCPを用いて,「湖水の動き」を考える上で不可欠な因子である(1)主要流出入河川の流量,(2)沿岸に繁茂する水草帯内外の流れ場,(3)唯一の流出口である釜口水門付近の流れ場の現地観測を行った.得られた結果は以下の通りである.(1)主要流入河川の上川・宮川・砥川において,観測結果と長野県発表の流量データには大きい差があったが,流出河川の天竜川においては,観測結果と県データの差が小さかった.(2)水草帯内外で流れ場の構造は異なっていた.また,水草の存在が水平方向流速を小さくし,乱れ成分が支配的な流れ場特性を作り出していた.(3)諏訪湖唯一の流出口である釜口水門付近における流出傾向は,北東部からの方が南西部からに比べて卓越していた.