雑草研究
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オモダカの初期生長におけるエチレンと二酸化炭素の役割
菅 洋草薙 得一
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1995 年 39 巻 4 号 p. 237-242

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抄録

水田多年生雑草のオモダカ (Sagittaria trifolia L.) の初期生育を支配する要因を研究し, エチレンと二酸化炭素が暗黒中において, その生長を促進することを見い出した。オモダカは, 直径5~15mm程度の地中に形成した塊茎より発生し, 最初に細長い沈水葉 (submerged leaf) を, 続いてそれより葉幅の広いへら葉 (spoon-shaped leaf) を, そして最終的に気中に突出した長い葉柄の先端に, いわゆる矢尻状葉 (arrowhead-leaf) をつける。
この最初に出てくる沈水葉の長さは, 塊茎を浸水する水深が深いほど長くなり (第1図), また葉の幅も広くなった (第2図)。塊茎をサイズの異なるフラスコに密閉すると, 容器のサイズが小さい程幼植物の生長は促進された (第3図, 第4図)。このことは, 植物が生成するガス成分が生長に関与することを示唆し, それの候補としてエチレンと二酸化炭素が考えられたので, 濃度の異なるエチレンの効果を試したところ, エチレンは暗黒中における初期生長を, 促進することが見い出された (第5図, 第6図)。最も生長を促進するエチレン濃度は, 10μL L-1であった。植物から発生するエチレンと二酸化炭素が, 実際に初期生長に役割を演じているかどうかを確かめるため, エチレンまたは二酸化炭素, あるいはその両方を除去した気中で試験すると, 暗中での初期生育はこの両方のガスを除去した気中で, 最も小さくなった (第1表, 第6図)。このことから, オモダカの暗中での初期伸長に, 植物自身から発生するエチレンと二酸化炭素は, 重要な役割を演じていると結論された。

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