雑草研究
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無湛水栽培における雑草害と雑草防除体系
鈴木 嘉一郎宇田 昌義佐本 啓智山川 勇
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1970 年 1970 巻 10 号 p. 52-56

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抄録

(1) 水管理の異なる乾田直播水田の雑草量の推移を調査した結果, 雑草量は, 終始無湛水の全期乾田区では, 慣行乾田直播の全期湛水区に比べ, 分けつ期・減数分裂期に著しく多いが, 登熟期には湛水区と大差なくなり, 減数分裂期に湛水に切りかえた減数分裂期以後湛水区では, 湛水後に著しく増加し, 登熟期には他よりも著しく多くなった。
(2) 水管理の差異による雑草草種の差異については, 全期湛水区ではノビエが最も多く, マツバイ・カヤツリグサ・コナギ・メヒシバがこれに次いだが, 全期乾田区・減数分裂期以後湛水区では, メヒシバ・ノビエの生育量が大きくて他の雑草の生育を抑制した。
(3) 雑草による水稲の減収率は, 全期乾田区が全期湛水区よりも高かった。これは全期乾田区では水稲と雑草との間の水分競合が著しいことと, イネ科雑草が多発したことによるものと考えられた。また除草効果は全期乾田区>減数分裂期以後湛水区>全期湛水区の順となり, 無湛水栽培における除草の意義は慣行乾田直播よりもさらに大きいと考えられた。
(4) 終始無湛水の全期乾田区における雑草放任の悪影響は, 次年度のみならず翌々年までみられた。
(5) 土壌水分と雑草発生量との関係を知るため, 最大容水量の異なる3種の土壌を用いて調査した結果, 雑草の発生量は, 土壌水分が最大容水量比で約 90% (pF約1.0) で最も多く, 100~70% (pF 0~1.5) で比較的多く,それ以下の土壌水分では急減した。
(6) 無湛水栽培において, 数種の新除草剤を用いて除草体系を検討した結果, NIP (播種後)+DCPA (生育期)+DCPA (生育期) の体系が,薬害および除草効果の点から有望とみられた。しかし大型散布機具を用いた除草剤散布の効果は, 水稲が繁茂した後では雑草への接触が悪くて十分とはいえず, 中耕や手取り除草を必要とした。
(7) 以上のように, 無湛水栽培では, 慣行乾田直播栽培よりもイネ科雑草の発生が多く, かつ発生量も多いので, 除草剤による防除のみでなく, 機械的防除や生態的防除をも考慮して除草体系を組立てる必要があろう。

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