大町市の高瀬川の上流域には径30 mほどの巨礫が存在し,仙人岩と呼ばれている.仙人岩は花崗閃緑岩の貫入岩であり,大小の岩塊を多量に含んで角礫岩状の見かけを呈し,一部はカタクレーサイト化する.仙人岩付近の地質は黒雲母花崗岩を主とし,対岸斜面に角閃石黒雲母花崗閃緑岩を伴う.対岸斜面には大規模な地すべり地形があり,地すべりの中央部を花崗閃緑岩の岩脈が横断する.花崗閃緑岩の岩脈付近は,熱水変質により軟質化する. 仙人岩の供給源は,対岸の花崗閃緑岩岩脈の可能性が大きい.地すべりによって移動した岩脈の一部が流出したと考えられる.ただし,上流に位置する七倉ダム貯水池に水没した箇所を起源とする可能性も残る.