2020 年 5 巻 p. 37-46
2014年に環境省によるライチョウ保護増殖事業が開始される以前,ライチョウLagopus muta japonicaの低地飼育は市立大町山岳博物館で唯一継続的に行われてきた.この取り組みによって様々な知見が集積されたが,一般に公開された資料は1992年発行の当館編著『ライチョウ 生活と飼育への挑戦』(信濃毎日新聞社)に限られ,以後断続的に当館からの報告がなされたに過ぎない.本稿は,高山帯の気候を再現した人工気候室における飼育施設での飼育が行われた1975年から2004年までの飼育管理の概要について報告し, 生息域外保全におけるライチョウの飼育・繁殖技術の向上に資することを目的とする.