芸術学論集
Online ISSN : 2435-7227
数理的秩序による構造を基盤とした平面表現における構造の構成と視覚効果の関係
上浦 佑太
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キーワード: 数理的秩序, 構造, 平面表現
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2020 年 1 巻 p. 41-50

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抄録

平面状の媒体で展開される表現には、数理的秩序に則って複数の図形を配した構造を基盤とするものがある。本研究の目的は、このような数理的秩序による構造を造形表現や造形教育において有効に活用するために留意すべき点を示すことである。本研究では、とくに数理的秩序による構造を構成する図形どうしの位置関係に着目して平面表現の事例を取り上げ、構造の構成と視覚効果の関係について考察する。

本研究では構造を構成する図形どうしの位置関係に着目して以下3種類のタイプに分けた。

1)図形どうしを離して並べた構造

2)図形どうしが接するように並べた構造

3)図形どうしが重なるように並べた構造

事例研究の対象としては、平面表現において数理的秩序の活用が多く見られるようになった1930年代から現代までの絵画やポスターデザインなどを取り上げた。

研究の結果、以下のことが分かった。

図形どうしを離して並べた構造を活用した表現では、構造を構成する図形一つひとつに施されている操作の差異や離れた要素の間に生ずる特殊な見え方を強調するために、図形の並べ方や間隔を十分に検討するのが有効である。図形どうしが接するように並べた構造を活用した表現では、隣り合う形の融合やシステマチックな平面充填により生まれるリズムを強調するために、構造に対して配置する図形の色や形を十分に検討するのが有効である。図形どうしが重なるように並べた構造を活用した表現では、構造の成り立ちそのものがもつ数理的な美の強調や、形の合成による予期せぬ形の生成のために、図形の重なりにより生じる接点や交点、線の連続性などに着目しつつ構造を検討するのが有効である。

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