地域漁業研究
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研究ノート
東日本大震災前後の我が国水産物輸出の動向分析
中里 靖
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ジャーナル オープンアクセス

2014 年 54 巻 2 号 p. 45-69

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抄録

本稿は,東日本大震災における放射能事故を契機として,諸外国が相次いで、我が固からの水産物輸入に対する規制措置を講じたことを踏まえ,震災前後での我が国水産物輸出の変化を分析しその変動要因と輸出環境について考察を行ったものである。

政府は農林水産物の輸出拡大を目標としているが震災後我が国の水産物輸出は減少した。しかし震災のあった2011年から2012年にかけて震災前より輸出が増大した回数が増えるなど回復を期待させる兆候がみられる。

一方,諸外国の輸入規制措置は徐々に緩和される傾向にあるが,近隣国では一定の都県の水産物について輸入停止とするなどの厳しい措置が講じられている。また,品目によっては,輸出減少の要因として,国内の供給力の低下も係わっていると考えられる。

震災後水産物輸出は回復傾向を示しているが,品目ごとの動向は多様であり,国内生産が輸出を不安定化させている面も見られることから,水産物輸出を今後とも拡大していくためには,国内に流通する全ての水産物の安全対策に万全を期しつつ,各国の輸入規制の緩和に向けた働きかけを継続するとともに,国内の安定した供給体制を確保していくことが重要である。

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© 2014 地域漁業学会
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